----------------------------------------------------------------------
●コラム【とかちの窓から】 第48回
『保険適応となったニキビ治療薬アダパレン(1)』
----------------------------------------------------------------------
| こんにちは。とかち皮膚科院長・とかち美白研究所所長の大石真暉です。 何気なく雑誌を眺めていて、地元の帯広・十勝について書かれている連載を見つけました。 作家の林真理子さんが書かれている、週刊文春(2008.7.31)連載の『夜ふけのなわとび』(1081 心して食べる)です。 林さんは、最近の諸物価値上げに関連して、食料危機を大変危惧され、口にするものがすべていとおしく大切であり、心して食べるようにしたいと述べられていました。 また、その中で、帯広での講演会の様子が書かれていました。『都会から移住して農業に従事する人が増えている』『十勝地方の食料自給率は千%超である』など、地元の人から嬉しい話をお聞きになったそうで、最後には、『日本を救ってくれるのは、この地域かもしれないと、思わず手を合わせたくなってくるではないか。』とまで書かれています。 日本を救うは大げさとして、私が地元に帰ってきた理由の一つは、この食料事情の良さでした。 原油高騰や、WTOなど貿易自由化に関する不透明な状況もありますが、帯広・十勝は魅力的です。熱帯のような都会暮らしで疲れたり、将来に不安を感じた時、ふらっと立ち寄って見て下さい。 何か答えが見つかるかも知れませんよ。 とかち美白研究所では、VCローション等を購入されている方に会報を毎月発行しております。 そこの片隅に『ニキビ治療の4ヶ条(4決め!)』というものを載せています。 (思い当たる所があれば今日から早速実行してみて下さい。)
これは私が皮膚科診療を18年やってきた中で非常に重要と思い標語にしたものです。 ニキビ治療には様々な治療方法があり考え方も様々です。 このコラムでは、第15回までは『ニキビ治療の4ヶ条』を系統立てて解説してきました。 第16回からは『落ち穂拾い』と題して、『ニキビ治療の4ヶ条』を『基本中の基本(中核)』と考え、日々気付いたニキビ治療に関連したこと一つ(今まで取り上げていなかったが重要なことなど= 落ち穂 )にフォーカスをあて(= 拾い )、お話させていただいています。 (バックナンバーは http://www.bihaku-labo.com/columnframe.htm をご覧下さい。) 今回は、保険適応となり、近日中に一般の皮膚科でも処方可能となる、ニキビの外用治療剤『アダパレン:商品名 ディフェリン(Differin)』についてお話させていただきます。 『アダパレン』は、ニキビの外用治療剤に使用される有効成分で、レチノイド(#)様作用を有するナフトイン酸誘導体です。 (#) レチノイン酸(ビタミンA酸)は、細胞の分化・増殖、形態形成などの基本的な生命現象を特異的に制御する内因性物質です。その生物学的に同様な効果を持つ物質を総称して「レチノイド」といいます。 『アダパレン』を含有した外用治療剤(ゲル・クリーム)は、Differinという製品名で世界80カ国以上で承認・販売されています。 日本では、今年7月に『ディフェリンゲル0.1%』が製造販売承認をうけ、近日中に皮膚科でも保険適応となり処方することができるようになります。 アダパレンは、これまで、自由診療の皮膚科で使われていたり、個人輸入の上で、自己責任で使われている場合もあったようです。 しかし、副作用もあり、薬の持つ特長を良く理解した上で、慎重に使用することが大切です。 このコラムでは、今回は薬の特長や効果を発揮するメカニズムについて解説し、次回では実際の使用方法等について解説させていただきます。 ニキビのメカニズムをまず、復習することから始めたいと思います。 アダパレンに関しては、『面皰:めんぽう:comedo』という言葉がキーワードとなります。 ( http://www.skincare.co.jp/acne-3.html で実際の写真をみることができます。) ( http://www.galderma.jp/c_medical/pdf/acne.pdf でイメージ画像をみることができます。) 『面皰』は、ニキビができる過程でみられる病態です。 主に男性ホルモンにより皮脂腺が活性化され、皮脂分泌が亢進し、さらに毛包漏斗部の角化が亢進することにより、毛包内に皮脂が貯留し、ニキビ菌プロピオンバクテリウム-アクネス(#)の菌数が増加した状態です。 (#)皮膚と毛包内の常在菌で、ニキビの炎症過程に主に関与します。 『面皰:めんぽう:comedo』には以下の3つがあります。 1.『微小面皰:びしょうめんぽう:micro-comedo』 肉眼では見ることのできない、面皰の前段階です。 毛包漏斗部の角化と皮脂の貯留という、microな病理組織学的変化としてとらえることができます。 2.『閉鎖面皰:へいさめんぽう:closed comedo:白ニキビ』 肉眼的には、毛孔は「開口」せず皮膚内に黄白色の固まり=「小結節」を認めます。俗に「白にきび」ともいいます。 毛孔が角栓により閉鎖し、毛包内には皮脂が充満し、プロピオンバクテリウム-アクネスの塊を認めます。 3.『開放面皰:かいほうめんぽう:open comedo:黒ニキビ』 毛孔が開放して黒褐色の「点状物」がみえます。俗に「黒にきび」ともいいます。 毛孔が開いています。黒く見えるのは、毛包漏斗部とその周辺の表皮メラノサイトより産生されたメラニンと、過酸化された皮脂のためといわれています。 3.『開放面皰』は、2.『閉鎖面皰』から毛孔の出口が開いて生じるとされています。 『面皰:めんぽう:comedo』の特徴は『痒み』のないことで、2.『閉鎖面皰』と3.『開放面皰』は『非炎症性皮疹』に分類されます。 ニキビでは、通常1.『微小面皰』から2.『閉鎖性面皰』へと進展し、3.『開放性面皰』を生じたり、さらには、面皰内でプロピオンバクテリウム-アクネスが増殖して、炎症が起こり、『紅色丘疹(赤ニキビ)』や『膿疱』、『嚢腫』、『結節』などの『炎症性皮疹』へと到ります。 ( http://www.galderma.jp/c_medical/pdf/acne.pdf で『紅色丘疹(赤ニキビ)』や『膿疱』のイメージ画像をみることができます。) ニキビのある所には、『微小面皰』、『非炎症性皮疹(閉鎖面皰、開放面皰)』並びに『炎症性皮疹(紅色丘疹、膿疱など)』が混在しています。 よってニキビを治療する場合には、『微小面皰』、『閉鎖面皰・開放面皰』を治療し、『炎症性皮疹』への進展を抑制することが重症化を防ぐためにも重要となります。 『アダパレン』は、皮膚の表皮に存在するレチノイン酸レセプターに選択的に結合し、毛包上皮細胞の角化を制御するため、『面皰』の形成を抑制し、『炎症性皮疹』への進行を防ぎます。 『ニキビの根元を断つ』という薬です。 逆にいうと、ニキビでは、『微小面皰』から『閉鎖性面皰』となり、『開放性面皰』を生じ、『炎症性皮疹』へ変化するまでには、時間がかかりますので、『炎症性皮疹』が目立つニキビの場合、『アダパレン』のみでは、即効性は期待できないことになります。 『アダパレン』にも、『炎症性皮疹』に対する効果はありますが、『面皰』の形成を抑制する能力と比較すると弱めです。 従って、治療する上の作戦としては、以下の2つが考えられます。 1)即効コース 抗生剤などで『炎症性皮疹』を速やかに抑えながら、『アダパレン』を主に『面皰』に外用して、新たにできるニキビの減少を待つ作戦です。 2)のんびりコース 『炎症性皮疹』の存在には目をつぶり、多少時間はかかっても、『アダパレン』を主に『面皰』に外用して、新たにできるニキビの減少をはかり、最終的にはニキビ改善を待つという作戦です。 『モグラ叩きゲーム』というものがありますね。イメージ的には、1)即効コース では イ)抗生剤などで、最初に出てくる、目立つたくさんのモグラ=『炎症性皮疹』を叩くだけ叩いて、 ロ)『アダパレン』により、ちょいちょいでてくる目立たないモグラ=『非炎症性皮疹(面皰)』を悠然と落ち着いて叩き、 ハ)ゲームオーバー=『ニキビ改善』を待つというやり方になります。 2)のんびりコース では イ)最初に出てくる、目立つたくさんのモグラ=『炎症性皮疹』の存在は、眼中にないように振る舞い、 ロ)『アダパレン』により、ちょいちょいでてくる目立たないモグラ=『非炎症性皮疹(面皰)』を悠然と落ち着いて叩き、 ハ)何度も、ゲームオーバー=『少しずつのニキビ改善』を重ねながら、時間はかかりますが、ゴールに到達するというやり方になります。 ちょっと難しかったかも知れませんね。 今回のポイントは以下の通りです。
日が暮れるのも早くなり、北海道では既に秋風が吹いています。 今年の夏は『マイマイガ』という『ガ』が大量発生し、後始末に追われました。後始末の最中、『ガ』に反撃され、冷や汗をかき、体重も0.5キロ減少しました。 今年の秋は、おいしいものの食べ過ぎに注意したいと思います。 次回は、『アダパレン』の実際の使用方法等について解説させていただきます。 それでは。 おおいし まさき(大石 真暉:ペンネーム) (昭和41年北海道帯広市生まれ。平成6年札幌医大大学院修了。平成7年同皮膚科学講座助手。平成9年とかち皮膚科開院。平成14年とかち美白研究所開所。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士) |