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●コラム【とかちの窓から】 第70回
『ニキビと果物〜「甘い果物で太る」は本当?〜』
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こんにちは。とかち皮膚科院長・とかち美白研究所所長の大石真暉です。 先日、数年振りで、自分の出身大学の皮膚科同門会(OB会)に出席しました。しばらく出席していない内に、顔ぶれがどんどん新しくなり、女医さんが増えて、さながら女子会のような雰囲気になっていました。 懇親会では、つい先日、ロンドン留学を終えて帰国された、後輩の先生(男性)のお隣となりました。 研究の合間、ヨーロッパの諸外国を2〜3日の休みを有効に使い、格安航空券でかなり旅行されたそうです。楽しいお話し、ありがとうございました。 私は、大学で研究していた当時の昔話を炸裂させてしまいました。つまらない長話しをしてしまい、すみませんでした。 女医さん達のお話の中心は、ちょっと聞き耳を立ててみた所、『結婚と子育て』とか『専門医試験・皮膚科医として今後の働き方』の2つに集約されているようでした。これは今も昔も変わらない永遠のテーマですね。 先輩の先生は、相変わらずお元気なご様子でした。70歳でも現役という先生もおられ、本当にすごいと思いました。 中堅どころというポジションの私ですが、様々な世代の先生のお話を聞くのは、本当に良い刺激になります。 そうそう、時々パーティーやイベントに参加するのは大切ですね。ちょっとした友人との会話の中から、ニキビ改善に役立つ情報が得られることもあります。 今回は、『ニキビと果物〜「甘い果物で太る」は本当?〜』と題して、果物の素晴らしさについて考えてみました。 ニキビの治療には、お薬の力(=テクニカル/技能面)ばかりでなく、根気よく治療に取り組む力(=メンタル/精神面)も大切です。 このコラムが、その両方をうまくケアしていければ最高だなと思いつつ、自分自身が一歩でも前に進むつもりで、毎月お届けさせていただいています。 とかち美白研究所では、VCローション等を購入されている方に会報を毎月発行しております。 そこの片隅に『ニキビ治療の4ヶ条(4決め!)』というものを載せています。 (思い当たる所があれば今日から早速実行してみて下さい。)
これは私が皮膚科診療を20年やってきた中で非常に重要と思い標語にしたものです。 ニキビ治療には様々な治療方法があり考え方も様々です。このコラムでは、第15回までは『ニキビ治療の4ヶ条』を系統立てて解説してきました。 第16回からは『落ち穂拾い』と題して、『ニキビ治療の4ヶ条』を『基本中の基本(中核)』と考え、日々気付いたニキビ治療に関連したこと一つ(今まで取り上げていなかったが重要なことなど= 落ち穂 )にフォーカスをあて(= 拾い )、お話させていただいています。 (バックナンバーは http://www.bihaku-labo.com/columnframe.htm をご覧下さい。) 前回は、『ニキビと野菜を食べる工夫について』と題して、野菜を工夫して食べることによって食生活を改善させ、ニキビ改善につなげる方法を考えてみました。 今回は、『果物』のもつビタミンなどの優れた力を良く理解し、ニキビ改善につなげる方法を考えてみました。 ( http://www.fruit-safety.com/ を参考にさせていただいています。) 今、果物の健康効果が注目されています。果物には、健康維持に欠かせないビタミン類や、ミネラル類、食物繊維などが豊富に含まれています。 また、ニキビや生活習慣病の予防に効果があるさまざまな機能性成分も含まれています。 世界各国の広範な疫学調査の結果、果物と野菜をたくさん食べると、がんになる危険性も低下することがわかっています。 最近、街を歩いていて、特に目立つのが果物関連の飲食店ですね。果物のしぼりたて生ジュースを提供するおしゃれなジューススタンド、様々なフルーツパフェを売りにするパーラーや喫茶店はもちろん、果物をメニューの中心に取り入れている飲食店、果物店が運営するバーまで現れています。 私も、果物の持つ力には以前より注目していました。 第59回のコラムでは、『百歳バンザイ!』という番組を取り上げました。全国の百歳を越える元気なお年寄りの実生活を紹介する番組です。( http://www.nhk.or.jp/100banzai/ ) 男性が紹介されることは多くありませんが、男性は果物を好物とされる方が多いのです。コラムで取り上げた、札幌市に住む力石二三男(りきいしふみお)さん101歳も、特に好きな食べ物は果物です。 今回は、果物が持つ素晴らしい力と、 Q.「甘い果物で太る」は本当ですか? という気になる問題について、お話しさせていただきます。 ニキビにはビタミンC、ビタミンB類が有効な栄養素として良く知られています。またこれ以外にもビタミンAも有効です。 摂取の工夫等は、次回に譲るとして、まず、『果物に豊富に含まれる栄養素の基礎』について調べてみました。 総合的に扱っているものが物足りないため、私なりにまとめてみました。作業をしていて気づいたのは、その栄養の豊富さです。『栄養の宝庫=果物』といっても過言ではありません。 加工食品が溢れる中にあって、生で食べることができる果物は貴重な存在です。これが健康、長寿の秘密であると実感した次第です。 長くなりますので、気になる部分だけを拾い読みして下さい。結構驚くことも多いはずです。 また、最後に用意させていただいた問題、 Q.「甘い果物で太る」は本当ですか? の答えはどうでしょうか? お楽しみに。 [[ A.ビタミン ]] イ)ビタミンC ・オレンジ・グレープフルーツなどの柑橘類のほか、柿、アセロラ、キウイフルーツ、トマトに多く含まれます。 ・抗酸化作用があり、鉄の吸収促進、がん予防、抗ストレス等 の効果があります。 ・水溶性で加熱に弱く、調理することによって失われやすいため、 生のまま食べられる果実で摂ると効率的です。 ロ)ビタミンB群 ・ビタミンB群とは、水溶性ビタミンのうち、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ビオチンの8種の総称です。 ・ビタミンB1は、パイナップル、グレープフルーツに含まれます。B2は、バナナ、マンゴー、パパイア、B6は、バナナ、 柑橘類、葉酸は、桜桃に多く含まれます。 ・ビタミンB群、イノシトール等のビタミンB様物質は、エネルギーの供給や老廃物の代謝に関与しています。相互作用によって機能を発揮しているので、どれが欠けても疲れやすくなります。 ・果物には豊富に含まれ、効果的に摂取することができます。 ハ)ビタミンE ・アンズ、ブルーベリー、キウイフルーツ、モモ、サクランボに多く含まれます。 ・フリーラジカルを消去して酸化を防ぐ抗酸化作用と、抗酸化作用を介して生体膜を安定化させる作用があります。 ・老化防止やがん、高血圧、動脈硬化、心臓病、白内障等生活習慣病の予防効果があります。 ・酸化しやすく、熱に弱いので、生で食べる果物からの摂取は効率のよい方法です。 ニ)カロテン ・ミカンやアンズ、カキ、ビワなどに多く含まれています。 ・体内でビタミンAに変わるプロビタミンAで、代表的なものはβ-カロテンです。 ・抗酸化性が強く、皮膚、粘膜を健康に保つ働きがあり、発がん作用を抑えたり免疫機能を活性化する作用が知られています。 ・β-カロテンなどプロビタミンAは、ビタミンAの安全な供給源です。ビタミンAであるレチノールを過剰に摂取すると障害がでますが、β-カロテンは、過剰に摂取しても身体に蓄えられ、必要に応じてビタミンAに変換されるため過剰障害が起きません。 ・ビタミンAの供給源の80%は果物と野菜です。 [[ B.ミネラル ]] イ)カリウム ・神経の働きや筋肉の収縮などに関与しています。余分なナトリウムを体外に排出し、血圧をコントロールするので、 高血圧の予防に役立ちます。 ・果物には、カリウムが多く含まれていますが、ナトリウムはほとんど含まれていません。 ・調理によって溶出して失われやすく、生でそのまま食べられる果物は摂取に最適な食品です。 [[ C.食物繊維 ]] ニキビの大敵、便秘に効果! ・悪玉コレステロール(LDL)の上昇を抑える働きがあるペクチン等の水溶性食物繊維やセルロース等の不溶性食物繊維が多く含まれています。 ・食物繊維は、便秘の予防の他、糖質、脂質の分解を遅くしたり、発がん性物質等の体外への排泄、善玉菌と呼ばれるビフィズス菌等の大腸内での増加促進等により生活習慣病を予防したりする効果があります。 [[ D.機能性成分 ]] 抗酸化パワーでニキビ改善! ・植物に含まれる栄養素以外の成分を、フィトケミカル(phytochemical)といいます。 ・活性酸素を消去したり、免疫力を活性化したりする働きがあり、がんなどの生活習慣病を予防する効果があることがわかってきています。 イ)ポリフェノール類 ・植物に含まれている色素や苦味、渋みの成分で、多くの果物に含まれています。 ・代表的なものとして、フラボノイド、アントシアニン、カテキンが挙げられます。 ・イ)−1 フラボノイド ・果物の果肉などに含まれる無色や淡黄色の色素で、苦味をもつものもあります。毛細血管を保護する働きのあるものが多く確認されています。 ・フラボノイド類(アントシアニン類、フラボン類等)は、柑橘類(特に果肉を包んでいるじょうのう膜)に多く含まれます。 ・発がん抑制効果や、ビタミンCの機能を高めて毛細血管を丈夫にし出血を防いだり、血圧を降下させたりする効果があります。 ・イ)−2 アントシアニン ・赤や赤紫色の天然色素として利用されてきた成分です。抗酸化作用、動脈硬化抑制作用、がん予防などに効果的であるとの報告がなされています。 ・イ)−3 カテキン ・果物の味に深みを与える等食味を構成する成分です。多くの果物に含まれており、殺菌作用による口臭の予防や抗酸化作用による動脈硬化予防やがん予防等の効果があります。 ロ)リモノイド ・かんきつ類の苦味成分の一つで、ほとんど全てのかんきつ類に含まれています。 ・がんを予防する効果が期待できるフィトケミカルです。抗がん作用、抗腫瘍効果が動物実験などで確認されています。 ハ)有機酸 ・果物を食べたときに感じる酸味は、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の有機酸で構成されています。爽快で清涼感を与えてくれます。 ・有機酸は果物自体の呼吸に使われるため、貯蔵することにより減少します。 ・クエン酸はかんきつ類に多く含まれますが、その他の果物にも含まれる酸味成分です。 ・クエン酸やリンゴ酸は、糖質がエネルギーに順調に転換していくためにビタミンB群とともに不可欠な成分であり、疲労防止に効果があります。 ・有機酸は鉄の吸収を高めるので、貧血の防止効果があります。 [[ E.糖分 ]] ニキビの大敵ストレスをやわらげます! ・果物には、主にブドウ糖、果糖、ショ糖(砂糖)の3種類の糖分が含まれています。 ・多糖類であるでんぷんや二糖類であるショ糖は、人間の消化器官で、単糖類であるブドウ糖、果糖に分解された後、体の各器官のエネルギーとして利用されます。 ・ブドウ糖や果糖の多い果物は、素早くエネルギーにできるため疲労回復等の効果が早く発揮されます。 ・体の各器官は糖質、脂質、タンパク質のいずれもエネルギー源として利用しますが、脳は糖質(つまり最終的にはブドウ糖の形で)しかエネルギー源にできません。 ・ブドウ糖が多く含まれる果物は脳を効率的に働かせる効果もあります。 最後に、大切な問題です。 Q.「甘い果物で太る」は本当ですか? A. 果物は「甘いのでカロリーが高い」と誤解されがちですが、実際のカロリーは低く、脂質、炭水化物の量も菓子類を大きく下回ります。 果物が、ショ糖の1.15〜1.73倍の甘味度を持つ果糖を多く含み、より甘く感じられるため誤解されやすいのです。 また、「果物に多く含まれる果糖は脂肪の合成を促し、肥満や糖尿病の原因となる」という話を耳にすることがあります。ブドウ糖に比べて果糖が中性脂肪に変わりやすかった、という実験結果に基づいたものです。 しかし、この実験は摂取カロリーの20%を果糖から摂取しており、この条件を満たすためには1日に2700kcal摂取する人の場合、少なくとも約30個のミカン(約3kg)を食べる計算となります。これは非現実的ですね。 結論としては、『甘い果物が高カロリーで、肥満や糖尿病の原因となるという考えは大きな誤解で、通常の量を食べていれば問題ありません』ということになります。 なるほど、安心しました。私もこれで果物を心おきなく、食べることができます。 前回まで取り上げた『野菜』に加え、『果物』も本当に素晴らしい力を持っていますね。野菜サラダや野菜料理を組み合わせて食事を工夫し、野菜ジュースで不足分をカバー。そして、栄養の宝庫『果物』を加えてニキビが改善する。 健康に生きて行く上でも最強の組み合わせですね。 今回のポイントは以下の通りです。
果物といえば、先日こんな話を耳にしました。『私は、車は手放せん。果物を買いに行けなくなるからじゃ。』私の知合いで元気な80歳過ぎの男性の方の実話です。(ちなみにお肌はつるつるです。) 当地は車がないと買物に行けなくなり、買物難民となる場合もあります。元気なお年寄りは、果物好き。ニキビにもプラス効果が期待で来ますね。 次回は『ニキビと果物のオイシイ摂り方』について考えてみたいと思います。 それでは。 おおいし まさき(大石 真暉:ペンネーム) (昭和41年北海道帯広市生まれ。平成6年札幌医大大学院修了。平成7年同皮膚科学講座助手。平成9年とかち皮膚科開院。平成14年とかち美白研究所開所。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士) |